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適応障害

適応障害とは

適応障害とは自身の置かれた状況に慣れることができず、そのストレスによって苦痛を抱え、日常生活に支障をきたすようになる状態です。患者様の性格や甘え、両親のしつけなどの問題だと思われがちですが、決してそれらが原因で発症することはありません。
ストレスの原因は主に、生活環境の変化や何かしらのイベントなどで、はっきりしています。
不安がひどくなる方もいれば、うつ症状が現れる方もいます。放っておくと症状がひどくなり、ますます日常生活に悪影響を及ぼすようになります。放置せずに、早めにご相談ください。

診断書の発行について

当院では病状を正しく見極めるために初回の診断書発行は行っておりません。
症状を丁寧に伺い、治療を進めながら診断いたします。

適応障害の原因

大きな要因はストレスです。逆に明確なストレスがない場合は、適応障害と診断されません。
ストレスの内容は、患者様個人に起きた身の回りの出来事から、災害など地域社会レベルの大きいものまで、多岐にわたります。
仕事や恋愛、人間関係などで受けたストレスが、第三者から見れば小さなことだったとしても、患者様ご本人にとっては大きなストレスとなることもあります。
また、ストレスとなる出来事は決して、辛い事や悲しいことだけとは限りません。例えば進学や昇進、結婚、出産など、多くの方にとってはポジティブに受け取れる出来事でも、これらによる環境の変化がストレスになることも判明されており、適応障害のきっかけになるケースも存在します。

適応障害の症状

ストレスに対する心身の反応が現れるため、患者様一人ひとり異なります。特に、以下のような症状が多く見られます。

精神症状

  • 抑うつ気分を抱えている
  • 不安や焦燥感を抱えている
  • イライラする、怒りっぽい
  • 意欲の低下

身体症状

  • 頭が重い
  • 動悸
  • めまい
  • 汗をたくさんかく
  • 眠れない、または寝すぎるといった睡眠障害
  • 食欲が湧かない、または食べ過ぎる

行動に関する異常

  • 浪費をする
  • 喧嘩が多くなった
  • 暴飲暴食する
  • 無断で会社や学校を休む

適応障害の診断

重要なのは、うつ病にかかっていないかを見極めることです。適応障害には必ず、ストレスの元がはっきりありますが、うつ病もまた同じように、ストレスを抱え続けていた方が多くいらっしゃいます。そのため丁寧にお話をお聞きし、要因となるストレスを見つけ出し、そのストレスから離れる、またはそのストレスを小さくすることが必要です。また、休日などの行動内容やその変化も重要な情報になります。例えば、金曜日の夜になると元気になり、休日は満喫できたのにもかかわらず日曜日の夜から緊張や不安が強くなり、月曜日の朝には不調がひどくなり、学校・職場に行けなくなるケースも多々あります。
このような状態にいると、ご本人の周りの方は「本人の怠けではないか」と誤解してしまうかもしれません。しかし、このような捉え方は、患者様の治療において悪影響を及ぼす可能性もあります。
当院では以下の診断基準を踏まえて、診断を下していきます。

  • はっきりとした心理・社会的ストレスに対する反応で、そのストレスにさらされてから3ヶ月以内に発症する。
  • ストレスに対する正常で、かつ予測している以上の過度な症状がみられる。
  • 社会的または職業・学業に関わる機能障害がある。
  • 不適応反応は、ストレスが解消できれば6ヶ月以上持続しない。
  • 他の原因となる精神疾患が見られない

適応障害の種類は、症状に応じて何タイプかに分類されています。
適応障害の方のほとんどは、不安気分(不安、神経過敏、心配、イライラなどがある)、 抑うつ気分(抑うつ気分、涙もろい、希望がないなどの症状がある)あるいは、身体愁訴(しんたいしゅうそ:頭痛、腰痛、疲労感、不眠などの身体症状がある)のどれかを伴っています。特に、「気分が晴れない」「以前と違って元気がない」などを訴えて受診される方が多いです。

適応障害の診察と治療

診察

診察適応障害は「原因」がはっきりしており、その原因がストレスとなって現れています。
不調によってスムーズに話せない場合でも、ご本人の状態をよく見ているご家族などから、状況についてご説明いただくことで、確定診断が下せるようになります。症状が現れだしたポイントを明確にできることが、適応障害の大きな特徴となります。

治療

はっきりとした環境的ストレスとの関連性が分かっていて、かつ発症した時期もきちんと特定でき、心当たりのある原因を取り除けば、ほとんどの方が改善できるとされています。そのため、環境の調整を考えながら、必要に応じて自覚症状を落ち着かせる薬などを処方していく必要があります。疾患を改善させるためには、きっかけとなるストレスを全て取り除けるところまで、目指すのが理想です。
しかし例えば「職場の上司とうまくコミュニケーションできない」「新しい所への異動があり、そこでの業務が合わない」などで適応障害になったと仮定しましょう。もし「職場内の部署が1~2つしかない」「上司・ご本人の人事異動をすぐに行うのが難しい」状況にいると、すぐにこれらのストレスを取り除くのは困難になります。
こういった状況かどうかを把握しながら、必要に応じてカウンセリングなども実施し、ストレスとの付き合い方・捉え方などについても、身に付けていただいた方が望ましいこともあります。また、適応障害の症状はうつ病とよく似ているため、必要に応じて抗うつ薬を処方することもあります。

適応障害のよくある質問

適応障害を改善させるために、できる対策はありますか?

まずは、ストレスの元から回避する事が重要です。また、栄養バランスの整った食習慣や適度な運動の習慣、そして十分な睡眠時間の確保といった、生活習慣の改善も不可欠です。ヒトを含めた動物は元々、周りのストレスに対処・適応する力を持っています。冬の寒い時期でしたら厚着し、自宅内に食材がない時は買い物に行こうと外出します。こういった日常的な動作もストレスに対する立派な対処法です。元から心身の調子が整っていましたら、ストレスを取り除く、またはその影響を小さくする考え・行動ができ、周りからのアドバイスも余裕を持って聞く事ができます。
しかし、適応障害の患者様の場合、そういった行動や考え方、捉え方が狭くなっている傾向があります。そのためある程度回復してきたあたりから、ご自身の課題に取り組む必要があるのです。社会復帰した時に、ストレスを乗り越える力を身に付けていくことも、再発防止として大切になります。

適応障害とうつ病の違いは何ですか?

適応障害は、ストレスとなる環境にいる時に不調が生じ、ストレスとなる環境から離れると不調が落ち着く特徴を持っています。ただし、ストレスによるうつや不安、イライラ、不眠、動悸、吐き気といった不調で、社会生活に悪影響を及ぼすようになります。
環境の調整が有効とされていますが、そういった調整が難しい状況もあります。経過を辿っていく中で、うつ病や双極性障害、発達障害、不安障害、パニック障害、社交性不安障害など、他の疾患が背景にあったことが分かるケースもあります。そして、これらの疾患によって環境不適応にいたことが判明された後に、他の随伴症状(ずいはんしょうじょう)も見つかった結果、根本となる原因が分かるケースも存在します。ストレスとなる環境に長期間いると症状も長引きやすくなりますが、ほとんどの場合、ストレスをなくせば6ヶ月以内に改善できるとされています。
適応障害は他の疾患が関わっている可能性もあるため、根本となる原因をきちんと見極める事が大切です。

適応障害を理由に仕事を辞めました。少しずつ回復してきたため、転職活動を始めようか考えています。
その際、仕事選びで気を付けた方がいい事はありますか?

まず「ご自身と今までいた環境について」や、「どうして適応障害を発症したのか」を整理しておきましょう。ご自身の物事への捉え方・行動の傾向を理解することは、とても大事な事です。 「前職の職場でどういったことがあったのか」「適応障害になった経緯」など、ご自身にとってストレスとなるものを整理・理解しましょう。そしてできる限りカウンセリングなどを受け、ストレスへの対処法などを身に付けるのが望ましいです。
得意・不得意な仕事内容がはっきり分かっている場合は、それに合った仕事を選ぶ事も重要です。お悩みの際は、当院までご相談ください。

「怠けている」「根性が足りない」と言われました。適応障害と怠けはどう違うのでしょうか?

適応障害は、ストレスの元から距離を置くと症状が落ち着きます。ご本人にとって好きなこと・興味のあることを行っている時は、第三者にとって「健康に問題がない」と見られがちになります。そのため、「本人の怠け」と誤解されやすいのです。
通常の怠けと異なる点は、「何とか対処しようとしているのに、うまくいかず疲弊している」「それにより、ストレスを対処するのが難しくなっている」というところです。怠けの場合、「その人自身の困難の内容はともかく、何とかしようと思っていない」状態になります。周囲の状況が悪くなったり脅威が増えたりしても「気にしない」「周りがなんとかしてくれるから、自分はやらなくても平気」と捉える傾向があります。そのため、状況への違和感や危機感、焦りなどを抱えない、もしくは多少抱えていても、自身が行動に移すほど問題だと捉えていないようになります。
このような特徴は、適応障害の方と全く違います。「ストレスによって発症する」適応障害は言い換えると、「ストレスに耐えて乗り越えようと対処したが、その方の社会的スキルが現在の環境とミスマッチを起こしている」状態でもあります。

我慢し続けたら治りますか?

適応障害はストレスに耐えるキャパシティーを超えた時に起こるものです。すでにご自身で対処できる容量を超えているため、無理し続けると症状が悪くなり、他の精神疾患を併発させるリスクも高くなります。「どうして発症したのか?」と原因を探ることも大事ですが、特に治療を始めたばかりの辛い時期は、ゆっくり休養を取る事を優先しましょう。一定の休養期間を経て、心身ともにある程度元気になった時に、原因と対策を探りましょう。
当院では、患者様ご自身で対処法を見つけ、身につけていくトレーニングのサポートも行っています。「人に頼る」「病院へ行く」事も、対処法の一つとなります。気兼ねなくご相談ください。

適応障害と診断されました。周りの人にどうやって説明すればいいのか悩んでいます……。

適応障害の診断を受けた際、ご自身の忍耐力や根性のなさを言われたようで、周りの方に病気であることを打ち明けづらくなるかもしれません。「どれくらい辛いのか」などについては、まず話してみないと相手に伝わりません。ご自身の力で状況を整理・理解し、把握する力を取り戻してから、話し合っていきましょう。
また打ち明け方につきましては、一度医師に相談していただき、ご本人の意思を尊重して話すかどうかを決めていくことをお勧めします。