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大人の発達障害

大人の発達障害とは

発達障害は脳機能の偏りで生じるものです。心に問題があるのではなく、家庭環境や保護者の育て方、本人の性格で生じるものではありません。
大人になるまで発達障害の診断を受けなかった方は、「本人の特性が比較的軽かった」「苦手な部分をカバーする力を持っていた」「周りから助けられる環境にいた」「適性に合った進路を選択できていた」などに当てはまる方が多いかと思います。
特に学生時代ですと「ちょっと個性的な人」「ちょっと変わっている」と思われていても、大きな問題にならないことも珍しくありません。
しかし「大学・専門学校への進学」や「就職」「仕事量の増加」「人とのコミュニケーションの機会が増える」「責任の重い役職に就く」などの環境変化によって困り感が増え、二次障害として抑うつや不安、身体の不調などが現れ、辛い思いを抱えることもあります。

当院では診断のための検査が可能です。専門的な治療が必要な場合は専門の医療機関をご紹介します。

大人の発達障害の疾患と症状

発達障害の種類は、下記の通りになっています。複数の発達障害を併発している患者様も少なくありません。

自閉スペクトラム症(ASD)

  • 人の気持ちを察するのが苦手。
  • 「空気を読む」のが苦手。そういった感覚が掴めない。
  • 人の顔や目を見て話すのが苦手。
  • 雑談する時、何を話していいのか分からない。
  • グループでの会話に入れない。話についていけない。
  • 集団行動が苦手で、無理して空気を読もうとすると疲れてしまう。
  • 音や光に敏感。人に触られるのが苦手。
  • 周りの人が問題なくこなせていることができない。

注意欠如・多動症(ADHD)

  • 片付けが苦手。
  • 物音や話し声が聞こえるとすぐに集中が途切れてしまう。注意が逸れてしまう。
  • 一つの作業を行っていても、他の作業が気になってそちらの方を始めてしまう。結局、全ての作業が中途半端になることがある。
  • ゲームやネットサーフィンなどに夢中になり止められなくなる。気付いたら深夜や朝になることが多い。
  • メールの文章が長くなる。段落を付けるのが苦手。
  • 内容を簡潔にまとめて説明するのが苦手
  • 話の要点が理解できない。要点がまとめられない。

限局性学習症(SLD)

  • 読み書きが苦手。
  • 計算するのが苦手で、会計する時に混乱する。
  • 数字の桁が増えると分からなくなる。

大人の発達障害の治療

臨床心理師発達障害の特性は、その方が生まれつき持っている「ものの捉え方、行動の仕方」などと密接に結び合っています。治療では、それらの特性を全て変えません。生活で起こり得る問題を減らしてよりスムーズに日常生活を送れるよう、対処法を身につけ、本人にとって馴染める居場所や役割を見つけ出すことが重要です。そうするためにはまず、「どうして上手くいかないのか」「どうすれば改善できるのか」を、色々な方面から探っていく必要があります。
正確な診断を下すのに患者様の情報を集めるのに、多少お時間をいただくことがあります。
なお、専門的な治療が必要な場合は専門の医療機関をご紹介します。

薬物療法

ご自身に合った薬が見つかるまで、時間を要することがあります。併発している疾患を治す対症療法も不可欠です。

対処法を身につける

カウンセリングやソーシャルスキル・トレーニングなどを行います。集団生活だけでなく、患者様個人の生活にとっても有益です。

環境調整

周りに助けを求めることも大切です。あらゆる支援機関を利用することもできます。

主な治療薬と注意点

抗うつ薬

  • 抗うつ作用(落ち込みを緩和させる)や抗不安作用(不安を落ち着かせる)、こだわりや強迫症状を和らげるなどの効果に期待できます。
  • 神経伝達物質であるセロトニンなどのモノアミンの濃度を高めていく薬です。
  • 例:SSRI(パキシル、レクサプロ、ジェイゾロフト、ルボックス、デプロメール)、SNRI(イフェクサー、サインバルタ、トレドミン)、NaSSA(リフレックス)など

抗精神病薬

  • 易怒性(いどせい:怒りっぽくなる)や興奮などの緩和にも期待できます。
  • 主にドーパミン受容体を遮断させる効果によって、ドーパミンの作用を弱めていく薬です。
  • 例:SDA(リスパダール、 ルーラン、ロナセン)、MARTA(ジプレキサ、セロクエル)、DSS(エビリファイ)など

気分安定薬

  • 主に、双極性障害(躁うつ病)の治療に処方される薬です。
  • 躁状態(気分の昂り、興奮、易怒性)などを緩和させたり、「気分の波」を軽減させたりする効果に期待できます。感覚過敏を緩和させるために処方されることもあります。
  • 『ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)』と『コンサータ(メチルフェニデート塩酸塩)』は、ADHDへの適応を持っている代表的な薬です。

ストラテラ(非中枢神経刺激薬)

  • ノルアドレナリン伝達物質の再取込み口(トランスポーター)の働きを阻害させます。脳の神経には直接作用しません。この効果により、ドーパミンの量を増やしていきます。

コンサータ(中枢神経刺激薬)

  • ストラテラとは違って、脳の神経に直接作用する薬です。神経細胞にあるトランスポーターの働きを阻害し、ドーパミンなどの再取り込みを直接抑制させていきます。
  • 登録を受けた医師しか処方できません。

※ADHDは、放出されたドーパミンなどが「再取り込み」しすぎる事によって、神経伝達に支障をきたして起こっているのではないかと考えられています。

インチュニブ(非中枢刺激薬)

  • ADHD治療薬として、日本で初めて採用された「選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬」です。
  • お子様(6歳~18歳未満)の患者様だけでなく、大人(18歳以上)のADHDの方にも適応できると言われています。
  • 臨床結果では、ADHDの中核症状である多動性と衝動性、不注意のいずれかの症状改善があったと報告されています。

服薬する際の注意点

  • すぐに効果を発揮する薬だけでなく、服薬開始日の2週間後くらいから少しずつ効果が現れ、安定した効果を得るまで8週間ほどかかる薬もあります。
  • 勝手な判断で、服薬を中止したり量を減らしたり増やしたりするのはお止めください。
  • 他の精神科・心療内科や医療機関を受信されている場合は、薬を飲んでいる事を予めお伝えください。
  • 服薬期間中は、運転と飲酒を避けてください。
  • 女性の場合、服薬期間中の妊娠・授乳は極力避けてください。妊娠を希望される際は、予め医師へご相談ください。
  • 「なんだか普段と違う」と思うような不調が出た際は、医師へ必ずご相談ください。
  • 口頭ではなく、紙に症状についてまとめたものを渡しても大丈夫です。

上手く対応するためには

特性に対する理解を深め、周りとのコミュニケーションをとりながら話し合いを繰り返すことは、より良い人間関係を得るにおいて重要なことです。
自分の強みや良いところを活かせる工夫を行っていきましょう。

当院では、発達障害の検査(WAIS)に対応しています。ただしこの検査はあくまで、診断の目安で自己理解を深めるために行われるものです。確定診断できるものではないことを、ご理解いただけますと幸いです。

『作業の進め方と時間の見通し』

  • 予想できないこと、不慣れな状況が苦手でいる傾向があります。
  • 極力、スケジュールや作業の進め方に見通しをつけるとより安心できます。
    余裕が持てるため、落ち着いて作業が進みやすくなります。
  • 日々のルーティンや流れについては、目で見て分かるようにすると良いでしょう。
    (例:絵や写真カードを使う、文章にしてまとめるなど)
  • 見通しがつかない予定などは「未確定だ」と把握しておくと良いでしょう。
  • 作業を終わらせるタイミングをはっきりさせておくと、安心しやすくなります。例えば、「○時まで」「ここまでできたら終わりにする」など、終わらせるタイミングを具体的に決めてから始めることをお勧めします。

『簡略化』

  • 特定の場所にいけば、その場所でどうすればいいのかを分かるようにしましょう。
  • 例えば「ベッドの上=寝るための場所」「ダイニング=ご飯を食べるための場所」と決めておくように、
    場所とその場で行うことを、できる限りシンプルにしておくと良いでしょう。
  • シチュエーションや時間、行う事などは、「小分けにする」「区切る」「分割する」ようにしましょう。
    気持ちを切り替えるのにも有効です。
  • 職場は責任と権限がはっきり言語化されていないため、理解しにくい傾向にあります。
    指示系統を統一させてシンプルにしていくことで、ストレスを軽減させることができます。

『作業は短時間で区切る』

力を抜いたり融通を利かせたりする作業が苦手な方も少なくありません。
完璧にとらわれてしまい、さらに疲れやすくなってしまうケースもあります。
例えば、「短時間で集中できるよう小休止をこまめにとる」「作業時間を決めてから行う」などを意識してみると、より長く作業に取り組めるようになる方もいます。

『こだわりすぎない』

独自のマイルールや信念を貫きすぎる傾向があります。ルールに執着することでイライラしやすくなったり落ち込みやすくなったり、周囲から孤立しやすくなったりすることも少なくありません。「こだわりが強い」ことは良いことでもありますが、そのこだわりを乱さないといけない、外さないといけない状況もあります。物事がルール通りに行われないことも頭に入れておくことが大事です。

『感じ方を和らげましょう』

五感が鋭すぎる方もいます。生活場面では、五感の刺激にさらされるため、ストレスが溜まりやすくなります。
具体的に言いますと「騒がしいところにいると不安になる、相手の声が聞き取れない」「パソコンの画面を見て疲れてしまう」などが挙げられます。
相手の声以外の音も拾ってしまう場合は、イヤホンで音楽(音量を低めにして)を聞いたり、耳栓などのグッズを活用したりする方法もあります。
パソコンや蛍光灯の光などで疲れてしまう場合は、専用のメガネやサングラスをかけると疲れにくくなります。
感覚を完全に遮断するのは難しいので、少しずつ慣れさせていくことも重要です。

特性の自己理解を深めて、周りと関わっていくことは、良い人間関係を構築する上でとても重要なことです。
ご自身の特技や良いところを活かしていけるよう、試行錯誤して対処法を身に付けていきましょう。
また、周りの人との連携を作り上げることも大事です。ありのままの自分を見つめ、「今できている事」を評価し、強みを広げていきましょう。

家族や周囲の対応

病気への理解

家族や周囲の対応発達障害は脳機能の偏りで発生します。決して、ご本人の気質や努力不足によって起こるものではありません。
発達障害を「正しく」理解することが、ご本人またはご家族への応援の一歩となります。

周りとの協力

周りの方との関係性を作り上げていきましょう。場合によっては発達障害支援センターなどの相談窓口を利用することも可能です。